血液透析の合併症≪感染症≫

透析患者の死亡原因の第2位は、感染症です。

 

患者の中には20年、30年と長期間にわたって透析を受けている人も多いのですが、食事制限が行われたり透析膜から栄養素が漏れることによって患者の栄養状態が悪くなったり、リンやカルシウム、鉄の代謝異常が起こることで白血球の機能が低下してしまって免疫力が低下するために、さまざまな感染症にかかりやすくなります。

 

たとえば、透析を受けるようになって尿量が減少したり無尿になることによって、腎臓や腎盂、尿管、膀胱、尿道などに大腸菌などの細菌やウイルスが感染して腎盂腎炎や膀胱炎、尿道炎などを起こす“尿路感染症”や、血行障害から起こる“皮膚の感染症”、鼻炎や咽頭炎、気管支炎などの“気道感染症”、腸管感染症や食中毒、腹膜炎、ウイルス性肝炎などの“消化管感染症”、さらに結核の発症率も一般の人に比べるとかなり高くなるために、熱や咳が2週間以上続くようであれば精密検査を受ける必要があります。

 

また長期間にわたって何度も皮膚に注射針を刺すことで、シャントやカテーテルから細菌感染しやすくなり、体全体に細菌が回ってあちこちで炎症を起こす敗血症を発症することもあります。

 

これらの感染症は一旦かかると重症や難治性のものに進行してしまうことが多いので、外出時にマスクをしたり、外出後のうがい手洗いは必ず行って細菌の侵入を食い止めることが大切ですし、最も発症頻度が高いと言われる肺炎などの肺感染症に対しては、肺炎球菌ワクチンの接種も行われているので医師に相談してみることをお勧めします。

血液透析の合併症≪発育障害≫

腎臓の病気で今注目されているのが、“慢性腎臓病”です。

 

腎臓の機能が60%未満に低下していて、血液中の老廃物が排泄できなくなる病気で、国民の約1割がかかっていることから“国民病”とも呼ばれています。

 

慢性腎臓病は自覚症状がないままに進行するために、気付いたときには手遅れになっていることもある病気で、悪化すると腎不全を引き起こして最終的には人工透析が必要となるケースが多く、大人では糖尿病が原因となって慢性腎臓病を引き起こすケースが殆どですが、子供では慢性糸球体腎炎やネフローゼ症候群、水腎症、腎低形成、腎異形成といった先天性の疾患が原因となっています。

 

“慢性糸球体腎炎”は、糸球体に慢性的な炎症が起こって血尿や蛋白尿が1年以上続いている病気で、子供では学校の健康診断で発見されることが多いようですが、そのうちの1/3程度は悪化すると言われていて、幼児の場合は、このような病気から腎機能が低下したり、血液透析を行ったりすることによって成長ホルモンの分泌が低下して発育障害が起こるという問題もでてきます。

 

また、成人の場合はインポテンツや月経異常、性欲低下といった症状が出ることもあるようです。

 

子供の場合は、血液透析などによってのびのびと過ごすべき貴重な時間が奪われて心の発育にも悪影響を及ぼすことが考えられるために、腎不全に陥った場合にはできるだけ早い時期の腎移植を勧められます。

 

現在では子供の体重が10㎏前後あれば、大人の腎臓を移植することも可能になっています。

血液透析の合併症≪神経障害≫

現在、日本で糖尿病を患っている人は約1300万人以上いると言われていますが、治療を行っているのはそのうちの半数程度で、自覚症状があまりないために健診などで糖尿病の疑いがあるという結果が出ても放置している人がかなりいるようです。

 

糖尿病は一旦かかると治すことのできないやっかいな病気とされていますが、これはインスリンを分泌する膵臓の細胞が死んで再生することがないからです。

 

そのために、できるだけ早期に食生活を改善して適切な治療を行わなければ糖尿病は確実に進行し、やがては腎不全を起こして腎臓移植か透析のいずれかを選ばなければならない状態になります。

 

血液透析にはさまざまな合併症がありますが、手足の末梢神経に異常が起こったり、知覚の異常が起こる“神経障害”は透析における3大合併症の1つで、その中でも最も発症頻度が高いものです。

 

この“神経障害”には“末梢神経障害”と“自律神経障害”とがあり、“末梢神経障害”では主に手足の感覚神経に異常が起きて手足のしびれや痛み、こむら返り、足の指先の違和感などを訴え、進行すると神経が死滅して痛みを感じにくくなりケガなどの手当てが遅れて切断を余儀なくされたりすることもあります。

 

“自律神経障害”は心臓や血圧、胃腸の動きなどをコントロールする自律神経に障害が起こってたちくらみやしびれ、不整脈、こむら返り、下痢、便秘、性機能障害などが起こるもので、透析患者の10~15%になんらかの症状が認められると言われます。

血液透析の合併症≪骨の異常≫

腎臓は、ビタミンDを活性化させて骨を強化する役割も担っています

 

食事で摂取されたり、日光を浴びて体内で合成されたりしたビタミンDは一旦肝臓に送られ、さらに腎臓に送られて活性ビタミンDへと変化して健康な骨を維持させるために働いているのです。

 

たとえば活性ビタミンDには、腎臓で尿がつくられる際に尿中のカルシウムの再吸収を促したりすることによって血液中のカルシウムの濃度を調整するはたらきがありますが、腎不全などで腎臓の機能が低下すると“活性ビタミンD”の産生も低下して “低カルシウム血症”を発症し、全身の痙攣やしびれを引き起こすことがあります。

 

また、ビタミンDは副甲状腺ホルモンの分泌を抑制する働きがありますが、腎不全によってビタミンDの産生が低下すると副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるようになります。

 

その結果“二次性副甲状腺機能亢進症”が起こり、血中のカルシウムを補おうとする作用から骨のカルシウムは壊されてもろくなり“線維性骨炎”という骨の異常を引き起こしやすくなります。

 

予防には食事療法を行ってリンを制限したり、食物中のリンが吸収されないように炭酸カルシウムなどの“リン吸着薬”が使われることもあります。

 

活性型ビタミンD製剤の服用も予防法の1つとされていますが、多すぎると逆にカルシウムの吸収が多くなりすぎて“高カルシウム血症”を起こして腎機能を低下させてしまうことにもつながりますし、炭酸カルシウムと併用すると危険度は高くなるので十分気を付けなければなりません。

血液透析の合併症≪脳血管障害≫

透析患者の死亡原因の第3位には、脳の血管が破れる脳出血や脳の血管がつまる脳梗塞といった脳血管障害が挙げられていて、一般の人と比較すると脳出血は約8倍、脳梗塞は約2倍も発症率が高くなっています。

 

中でも透析患者で、同時に高血圧や糖尿病、高脂血症の人は、長期間血液透析を行うことによって脳出血やくも膜下出血、脳血栓などの脳血管障害を起こす可能性がさらに高くなるので、食事療法などによって血圧や体重をコントロールして変動を少なくす必要があります。

 

そして脳血管障害を予防し、早期に発見するためには、頸動脈エコーや頭部CT、MRI、MRAなどの検査を定期的に行うことが大切だと言われています。

 

“頸動脈エコー検査”は心臓から脳に血液を送っている首の頸動脈に超音波を送って、はねかえってくる波を画像化し血管の内側の様子や血管内膜、血管壁を診て動脈硬化を起こしている部分がないかどうかを調べる検査で、頸動脈は動脈硬化が最も起こりやすい部分であることからこれによって全身の動脈硬化の進行具合を推測することができると言われています。

 

“頭部CT検査”は、脳の周囲360度からX線を照射して頭部の状況を5mm~1cmの間隔で撮影し、輪切りにした状態の画像を作成することができる検査で、これによって脳梗塞や脳出血、脳腫瘍なども早期に発見することが可能となっています。

 

検査は、検査台に仰向けに寝た状態でガントリーというドームのような機械の中に入ってじっとしているだけで、患者にかかる負担は少ないものです。

 

“頭部MRI検査”は磁気を用いて脳の断面を映し出す検査で、心臓ペースメーカーなどの金属が体内にある患者の場合は使うことができませんが、脳の検査に関してはCTよりも多くの情報を得ることができると言われています。

 

また、MRA検査はMRI検査の技術を利用して血管だけを立体的に映し出すことができるように開発されたもので、くも膜下出血や脳動脈瘤の発見に役立っています。

血液透析の合併症≪心不全・肺水腫≫

日本の血液透析の技術は優れていて、透析患者の生存率は世界一位だとも言われています。

 

けれども、どのように優れた透析治療でも長期になればなるほどさまざまな合併症が出現しやすくなるために、合併症の予防は大きな課題となっています。

 

合併症には、透析中に急に発症する筋肉痙攣や血圧低下などの“急性合併症”と、腎不全などが原因となって徐々に発症し継続する腎性貧血や免疫不全、動脈硬化などの“慢性合併症”とがあり、中でも心血管障害への対策は最も重要なものとされています。

 

慢性腎不全の患者の死亡原因のトップは、“心不全”だと言われています。

 

腎臓の機能が低下して慢性腎不全の状態になると腎臓で尿を作る機能も弱って尿量が減り、次第に出なくなってしまいます。

 

そのために、血液透析では体に溜まった毒素だけでなく摂取した余分な水分を除去するという作業が行われますが、次の透析まではずっと水分も溜まり続けるために透析と透析との間の体重増加は2kg前後になります。

 

この重さは一升瓶1本にも相当するもので、長い間に心臓の負担はかなり大きなものとなり心臓の全身に血液を送り出すというポンプ機能は徐々に低下し、全身に血液が十分送られなくなります。

 

特に肺の血液循環に与える影響は大きく、肺で血液中の二酸化炭素と呼吸によって取り込んだ酸素とのガス交換が十分に行われなくなると肺の毛細血管圧が上昇して水分が外に押し出され、気管支や肺胞に水分がしみ出て溜まる“肺水腫”を引き起こし、胸の痛みや息苦しさ、浮腫といった症状が出るようになります。

血液透析の合併症≪不均衡症候群・血圧低下≫

腹膜透析や血液透析といった人工透析の技術が進歩することによって、数十年前までは不治の病であると考えられていた末期腎不全も定期的な処置を行うことによって、健康な人と同じレベルの生活を送ることもできるようになりました。

 

けれどもこれらの透析療法によって腎臓の機能が取り戻されるわけではなく、むしろ透析が体の負担となって合併症や感染症を引き起こしやすくなるために、患者や患者の家族は医師の指導にしたがって予防に努める必要があります。

 

血液透析で多い合併症の1つに、“不均衡症候群”があります。

 

これは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンといった身体の電解質のバランスが崩れてしまうことによって引き起こされる症状で、頭痛や悪心、嘔吐、視力障害、興奮などの“中枢神経症状”と、全身倦怠感や血圧変動、不整脈、イライラ、筋肉の痙攣などの“全身症状”とがありますが、“中枢神経症状”は透析によって脳内の水分量が急激に上昇して脳浮腫が生じるために現れ、“全身症状”は急速に水分が除去されることによって血液の流れる量に異常が起こることが原因と考えられています。

 

このような症状は、透析導入期の透析中から透析終了後12時間以内に起こりやすいのですが、体が透析に慣れるに従って起こりにくくなってくるようです。

 

また透析では、血液中の尿毒素や余分な水分を取り除くために血圧の変動が起こりやすく、特に高齢者や貧血、心機能低下などがある人の場合は 、“血圧低下”が起こってあくびや吐き気、嘔吐、動悸、頭痛、冷や汗といった症状が出ることもあります。

血液透析について

かつては尿毒症や腎不全は不治の病とされていましたが、現在では多少の制約はあるものの人工透析や腎移植の技術の進歩によって、罹ったとしても健康な人と殆ど同じ生活を送ることができるようになりました。

 

人工透析は、末期腎不全になってほとんど働かなくなった腎臓に代わって体の血液を浄化する方法で、“血液透析”と“腹膜透析”の2つの方法があります。

 

“血液透析”は、汚れた血液をダイアライザーと呼ばれる人工腎臓の装置に送って老廃物と余分な水分とを除去して、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンの濃度を調節し、きれいな血液にして体に戻す方法で、週3回程度の割合で1回に4~5時間かけて行われます。

 

透析を受ける患者の殆どは尿が出ない状態で、摂取した水分はそのまま体に溜まるためにあらかじめ体にとっての適正な量の水分量を考慮した体重が決められ、その体重を基準に水分が除去されます。

 

一方“腹膜透析”は、自分のお腹の内臓の表面を覆っている腹膜をろ過装置として利用する方法で、お腹の中にカテーテルを通して透析液を入れておき、この液の中にでて老廃物や不要な水分等を体外に排出するというものです。

 

日本では現在約28万人の患者が人工透析を受けていると言われていますが、その殆どが血液透析で、腹膜透析を受けている患者は1万人にも満たないほど少ないようです。

 

またこれらの透析によって腎臓の機能が回復したりするものではなくあくまでも腎臓の代わりに行うだけで腎臓移植でもしない限り一生行わなければなりませんし、年月が経つにつれて合併症も出やすくなってきます。

尿毒症について

“慢性腎不全”が進行して腎機能が著しく低下すると、本来なら尿として排出されるはずの老廃物や毒素が体内に溜まってさまざまな中毒症状が現れてきます。

 

慢性腎不全の末期に起こるこのような状態を“尿毒症”といい、かつては不治の病として恐れられていました。

 

症状としては頭痛、めまい、倦怠感、動悸、息切れ、などの全身症状や、むくみや皮膚のかゆみ、食欲不振、下痢、腹痛、視力低下、胸水などさまざまで、人によっては甲状腺の異常や高インスリン血症、性機能障害、成長障害、肺水腫、尿毒症性心膜炎といった病気を併発すこともあり、治療せずに放置しておくと数日から数カ月の間に死に至ってしまうという恐ろしいものです。

 

また健康な腎臓からは、酸素を体のすみずみにまで運ぶ赤血球を増やす指令を出す“エリスロポエチン”というホルモンが分泌されて必要な量の赤血球が作られていますが、“慢性腎不全”によって機能が低下すると“エリスロポエチン”が分泌されなくなって赤血球も十分に作られなくなり“腎性貧血”という状態になります。

 

そうすると全身が酸欠状態になって疲れやすくなったり、動悸や息切れ、めまいといった症状が現れ、心臓にも負担がかかるようになります。

 

血液検査で尿素やクレアチニン、尿酸などの値の上昇から尿毒症という診断が下されると、入院して安静にし、たんぱく質や食塩を控える食事療法が行われて人工透析療法が開始されますが、場合によっては生体腎移植も必要となります。

慢性腎不全とは

“慢性腎不全”とは数カ月から数年といった長期にわたって進行する腎臓の病気が原因となって、腎機能が徐々に低下して行く状態を言い、腎臓の働きが正常時の1/5以下に落ちると、尿の量が増えたり、瞼や足がむくんで疲れやすくなったり、息切れや皮膚のかゆみ、貧血などの症状も出てきます。

 

“慢性腎不全” の原因となる腎臓病には、“糸球体疾患”の慢性糸球体腎炎や“間質疾患”の間質性腎炎、“感染症”の慢性腎盂炎や腎結核、“高血圧症”の腎硬化症、“先天性疾患”の多発性のう胞腎、腎欠損、腎位置異常、尿路形成異常、さらに“尿路閉塞疾患”の前立腺肥大や悪性腫瘍などさまざまなものがあります。

 

最近では高齢者の増加に伴って、糖尿病が原因となって起こる“糖尿病性腎症”や、高血圧が原因となって起こる“腎硬化症”が慢性腎不全を引き起こすケースが増えていると言われます。

 

ちなみに、腎臓は体内の老廃物を運んできた血液を“糸球体”という部分でろ過して尿として体外に排出し、きれいになった血液を体内に戻すという働きをしていますが、糖尿病による高血糖状態が続くと毛細血管の塊でできた糸球体の血管も破壊されて濾過機能が破たんし、体内に必要なたんぱく質まで尿として排出されてしまいます。

 

こうして血液中のたんぱく質濃度が減少すると、むくみや血圧上昇、老廃物の排出能力の低下などが起こって腎不全や尿毒症にまで進行してしまうことがあるのです。

 

診断が下されたら、まず “慢性腎不全”を引き起こした病気の治療を行い、その後でたんぱく制限と高カロリー、水分・塩分制限などの食事療法と、利尿剤や降圧剤などによる薬物療法が行われますが、それでも回復が見込まれない場合には人工透析が行われます。