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血液透析の合併症≪心不全・肺水腫≫

日本の血液透析の技術は優れていて、透析患者の生存率は世界一位だとも言われています。

 

けれども、どのように優れた透析治療でも長期になればなるほどさまざまな合併症が出現しやすくなるために、合併症の予防は大きな課題となっています。

 

合併症には、透析中に急に発症する筋肉痙攣や血圧低下などの“急性合併症”と、腎不全などが原因となって徐々に発症し継続する腎性貧血や免疫不全、動脈硬化などの“慢性合併症”とがあり、中でも心血管障害への対策は最も重要なものとされています。

 

慢性腎不全の患者の死亡原因のトップは、“心不全”だと言われています。

 

腎臓の機能が低下して慢性腎不全の状態になると腎臓で尿を作る機能も弱って尿量が減り、次第に出なくなってしまいます。

 

そのために、血液透析では体に溜まった毒素だけでなく摂取した余分な水分を除去するという作業が行われますが、次の透析まではずっと水分も溜まり続けるために透析と透析との間の体重増加は2kg前後になります。

 

この重さは一升瓶1本にも相当するもので、長い間に心臓の負担はかなり大きなものとなり心臓の全身に血液を送り出すというポンプ機能は徐々に低下し、全身に血液が十分送られなくなります。

 

特に肺の血液循環に与える影響は大きく、肺で血液中の二酸化炭素と呼吸によって取り込んだ酸素とのガス交換が十分に行われなくなると肺の毛細血管圧が上昇して水分が外に押し出され、気管支や肺胞に水分がしみ出て溜まる“肺水腫”を引き起こし、胸の痛みや息苦しさ、浮腫といった症状が出るようになります。

血液透析の合併症≪不均衡症候群・血圧低下≫

腹膜透析や血液透析といった人工透析の技術が進歩することによって、数十年前までは不治の病であると考えられていた末期腎不全も定期的な処置を行うことによって、健康な人と同じレベルの生活を送ることもできるようになりました。

 

けれどもこれらの透析療法によって腎臓の機能が取り戻されるわけではなく、むしろ透析が体の負担となって合併症や感染症を引き起こしやすくなるために、患者や患者の家族は医師の指導にしたがって予防に努める必要があります。

 

血液透析で多い合併症の1つに、“不均衡症候群”があります。

 

これは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンといった身体の電解質のバランスが崩れてしまうことによって引き起こされる症状で、頭痛や悪心、嘔吐、視力障害、興奮などの“中枢神経症状”と、全身倦怠感や血圧変動、不整脈、イライラ、筋肉の痙攣などの“全身症状”とがありますが、“中枢神経症状”は透析によって脳内の水分量が急激に上昇して脳浮腫が生じるために現れ、“全身症状”は急速に水分が除去されることによって血液の流れる量に異常が起こることが原因と考えられています。

 

このような症状は、透析導入期の透析中から透析終了後12時間以内に起こりやすいのですが、体が透析に慣れるに従って起こりにくくなってくるようです。

 

また透析では、血液中の尿毒素や余分な水分を取り除くために血圧の変動が起こりやすく、特に高齢者や貧血、心機能低下などがある人の場合は 、“血圧低下”が起こってあくびや吐き気、嘔吐、動悸、頭痛、冷や汗といった症状が出ることもあります。

血液透析について

かつては尿毒症や腎不全は不治の病とされていましたが、現在では多少の制約はあるものの人工透析や腎移植の技術の進歩によって、罹ったとしても健康な人と殆ど同じ生活を送ることができるようになりました。

 

人工透析は、末期腎不全になってほとんど働かなくなった腎臓に代わって体の血液を浄化する方法で、“血液透析”と“腹膜透析”の2つの方法があります。

 

“血液透析”は、汚れた血液をダイアライザーと呼ばれる人工腎臓の装置に送って老廃物と余分な水分とを除去して、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンの濃度を調節し、きれいな血液にして体に戻す方法で、週3回程度の割合で1回に4~5時間かけて行われます。

 

透析を受ける患者の殆どは尿が出ない状態で、摂取した水分はそのまま体に溜まるためにあらかじめ体にとっての適正な量の水分量を考慮した体重が決められ、その体重を基準に水分が除去されます。

 

一方“腹膜透析”は、自分のお腹の内臓の表面を覆っている腹膜をろ過装置として利用する方法で、お腹の中にカテーテルを通して透析液を入れておき、この液の中にでて老廃物や不要な水分等を体外に排出するというものです。

 

日本では現在約28万人の患者が人工透析を受けていると言われていますが、その殆どが血液透析で、腹膜透析を受けている患者は1万人にも満たないほど少ないようです。

 

またこれらの透析によって腎臓の機能が回復したりするものではなくあくまでも腎臓の代わりに行うだけで腎臓移植でもしない限り一生行わなければなりませんし、年月が経つにつれて合併症も出やすくなってきます。

尿毒症について

“慢性腎不全”が進行して腎機能が著しく低下すると、本来なら尿として排出されるはずの老廃物や毒素が体内に溜まってさまざまな中毒症状が現れてきます。

 

慢性腎不全の末期に起こるこのような状態を“尿毒症”といい、かつては不治の病として恐れられていました。

 

症状としては頭痛、めまい、倦怠感、動悸、息切れ、などの全身症状や、むくみや皮膚のかゆみ、食欲不振、下痢、腹痛、視力低下、胸水などさまざまで、人によっては甲状腺の異常や高インスリン血症、性機能障害、成長障害、肺水腫、尿毒症性心膜炎といった病気を併発すこともあり、治療せずに放置しておくと数日から数カ月の間に死に至ってしまうという恐ろしいものです。

 

また健康な腎臓からは、酸素を体のすみずみにまで運ぶ赤血球を増やす指令を出す“エリスロポエチン”というホルモンが分泌されて必要な量の赤血球が作られていますが、“慢性腎不全”によって機能が低下すると“エリスロポエチン”が分泌されなくなって赤血球も十分に作られなくなり“腎性貧血”という状態になります。

 

そうすると全身が酸欠状態になって疲れやすくなったり、動悸や息切れ、めまいといった症状が現れ、心臓にも負担がかかるようになります。

 

血液検査で尿素やクレアチニン、尿酸などの値の上昇から尿毒症という診断が下されると、入院して安静にし、たんぱく質や食塩を控える食事療法が行われて人工透析療法が開始されますが、場合によっては生体腎移植も必要となります。

慢性腎不全とは

“慢性腎不全”とは数カ月から数年といった長期にわたって進行する腎臓の病気が原因となって、腎機能が徐々に低下して行く状態を言い、腎臓の働きが正常時の1/5以下に落ちると、尿の量が増えたり、瞼や足がむくんで疲れやすくなったり、息切れや皮膚のかゆみ、貧血などの症状も出てきます。

 

“慢性腎不全” の原因となる腎臓病には、“糸球体疾患”の慢性糸球体腎炎や“間質疾患”の間質性腎炎、“感染症”の慢性腎盂炎や腎結核、“高血圧症”の腎硬化症、“先天性疾患”の多発性のう胞腎、腎欠損、腎位置異常、尿路形成異常、さらに“尿路閉塞疾患”の前立腺肥大や悪性腫瘍などさまざまなものがあります。

 

最近では高齢者の増加に伴って、糖尿病が原因となって起こる“糖尿病性腎症”や、高血圧が原因となって起こる“腎硬化症”が慢性腎不全を引き起こすケースが増えていると言われます。

 

ちなみに、腎臓は体内の老廃物を運んできた血液を“糸球体”という部分でろ過して尿として体外に排出し、きれいになった血液を体内に戻すという働きをしていますが、糖尿病による高血糖状態が続くと毛細血管の塊でできた糸球体の血管も破壊されて濾過機能が破たんし、体内に必要なたんぱく質まで尿として排出されてしまいます。

 

こうして血液中のたんぱく質濃度が減少すると、むくみや血圧上昇、老廃物の排出能力の低下などが起こって腎不全や尿毒症にまで進行してしまうことがあるのです。

 

診断が下されたら、まず “慢性腎不全”を引き起こした病気の治療を行い、その後でたんぱく制限と高カロリー、水分・塩分制限などの食事療法と、利尿剤や降圧剤などによる薬物療法が行われますが、それでも回復が見込まれない場合には人工透析が行われます。