月別アーカイブ: 2013年4月

血液透析の合併症≪感染症≫

透析患者の死亡原因の第2位は、感染症です。

 

患者の中には20年、30年と長期間にわたって透析を受けている人も多いのですが、食事制限が行われたり透析膜から栄養素が漏れることによって患者の栄養状態が悪くなったり、リンやカルシウム、鉄の代謝異常が起こることで白血球の機能が低下してしまって免疫力が低下するために、さまざまな感染症にかかりやすくなります。

 

たとえば、透析を受けるようになって尿量が減少したり無尿になることによって、腎臓や腎盂、尿管、膀胱、尿道などに大腸菌などの細菌やウイルスが感染して腎盂腎炎や膀胱炎、尿道炎などを起こす“尿路感染症”や、血行障害から起こる“皮膚の感染症”、鼻炎や咽頭炎、気管支炎などの“気道感染症”、腸管感染症や食中毒、腹膜炎、ウイルス性肝炎などの“消化管感染症”、さらに結核の発症率も一般の人に比べるとかなり高くなるために、熱や咳が2週間以上続くようであれば精密検査を受ける必要があります。

 

また長期間にわたって何度も皮膚に注射針を刺すことで、シャントやカテーテルから細菌感染しやすくなり、体全体に細菌が回ってあちこちで炎症を起こす敗血症を発症することもあります。

 

これらの感染症は一旦かかると重症や難治性のものに進行してしまうことが多いので、外出時にマスクをしたり、外出後のうがい手洗いは必ず行って細菌の侵入を食い止めることが大切ですし、最も発症頻度が高いと言われる肺炎などの肺感染症に対しては、肺炎球菌ワクチンの接種も行われているので医師に相談してみることをお勧めします。

血液透析の合併症≪発育障害≫

腎臓の病気で今注目されているのが、“慢性腎臓病”です。

 

腎臓の機能が60%未満に低下していて、血液中の老廃物が排泄できなくなる病気で、国民の約1割がかかっていることから“国民病”とも呼ばれています。

 

慢性腎臓病は自覚症状がないままに進行するために、気付いたときには手遅れになっていることもある病気で、悪化すると腎不全を引き起こして最終的には人工透析が必要となるケースが多く、大人では糖尿病が原因となって慢性腎臓病を引き起こすケースが殆どですが、子供では慢性糸球体腎炎やネフローゼ症候群、水腎症、腎低形成、腎異形成といった先天性の疾患が原因となっています。

 

“慢性糸球体腎炎”は、糸球体に慢性的な炎症が起こって血尿や蛋白尿が1年以上続いている病気で、子供では学校の健康診断で発見されることが多いようですが、そのうちの1/3程度は悪化すると言われていて、幼児の場合は、このような病気から腎機能が低下したり、血液透析を行ったりすることによって成長ホルモンの分泌が低下して発育障害が起こるという問題もでてきます。

 

また、成人の場合はインポテンツや月経異常、性欲低下といった症状が出ることもあるようです。

 

子供の場合は、血液透析などによってのびのびと過ごすべき貴重な時間が奪われて心の発育にも悪影響を及ぼすことが考えられるために、腎不全に陥った場合にはできるだけ早い時期の腎移植を勧められます。

 

現在では子供の体重が10㎏前後あれば、大人の腎臓を移植することも可能になっています。

血液透析の合併症≪神経障害≫

現在、日本で糖尿病を患っている人は約1300万人以上いると言われていますが、治療を行っているのはそのうちの半数程度で、自覚症状があまりないために健診などで糖尿病の疑いがあるという結果が出ても放置している人がかなりいるようです。

 

糖尿病は一旦かかると治すことのできないやっかいな病気とされていますが、これはインスリンを分泌する膵臓の細胞が死んで再生することがないからです。

 

そのために、できるだけ早期に食生活を改善して適切な治療を行わなければ糖尿病は確実に進行し、やがては腎不全を起こして腎臓移植か透析のいずれかを選ばなければならない状態になります。

 

血液透析にはさまざまな合併症がありますが、手足の末梢神経に異常が起こったり、知覚の異常が起こる“神経障害”は透析における3大合併症の1つで、その中でも最も発症頻度が高いものです。

 

この“神経障害”には“末梢神経障害”と“自律神経障害”とがあり、“末梢神経障害”では主に手足の感覚神経に異常が起きて手足のしびれや痛み、こむら返り、足の指先の違和感などを訴え、進行すると神経が死滅して痛みを感じにくくなりケガなどの手当てが遅れて切断を余儀なくされたりすることもあります。

 

“自律神経障害”は心臓や血圧、胃腸の動きなどをコントロールする自律神経に障害が起こってたちくらみやしびれ、不整脈、こむら返り、下痢、便秘、性機能障害などが起こるもので、透析患者の10~15%になんらかの症状が認められると言われます。

血液透析の合併症≪骨の異常≫

腎臓は、ビタミンDを活性化させて骨を強化する役割も担っています

 

食事で摂取されたり、日光を浴びて体内で合成されたりしたビタミンDは一旦肝臓に送られ、さらに腎臓に送られて活性ビタミンDへと変化して健康な骨を維持させるために働いているのです。

 

たとえば活性ビタミンDには、腎臓で尿がつくられる際に尿中のカルシウムの再吸収を促したりすることによって血液中のカルシウムの濃度を調整するはたらきがありますが、腎不全などで腎臓の機能が低下すると“活性ビタミンD”の産生も低下して “低カルシウム血症”を発症し、全身の痙攣やしびれを引き起こすことがあります。

 

また、ビタミンDは副甲状腺ホルモンの分泌を抑制する働きがありますが、腎不全によってビタミンDの産生が低下すると副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるようになります。

 

その結果“二次性副甲状腺機能亢進症”が起こり、血中のカルシウムを補おうとする作用から骨のカルシウムは壊されてもろくなり“線維性骨炎”という骨の異常を引き起こしやすくなります。

 

予防には食事療法を行ってリンを制限したり、食物中のリンが吸収されないように炭酸カルシウムなどの“リン吸着薬”が使われることもあります。

 

活性型ビタミンD製剤の服用も予防法の1つとされていますが、多すぎると逆にカルシウムの吸収が多くなりすぎて“高カルシウム血症”を起こして腎機能を低下させてしまうことにもつながりますし、炭酸カルシウムと併用すると危険度は高くなるので十分気を付けなければなりません。

血液透析の合併症≪脳血管障害≫

透析患者の死亡原因の第3位には、脳の血管が破れる脳出血や脳の血管がつまる脳梗塞といった脳血管障害が挙げられていて、一般の人と比較すると脳出血は約8倍、脳梗塞は約2倍も発症率が高くなっています。

 

中でも透析患者で、同時に高血圧や糖尿病、高脂血症の人は、長期間血液透析を行うことによって脳出血やくも膜下出血、脳血栓などの脳血管障害を起こす可能性がさらに高くなるので、食事療法などによって血圧や体重をコントロールして変動を少なくす必要があります。

 

そして脳血管障害を予防し、早期に発見するためには、頸動脈エコーや頭部CT、MRI、MRAなどの検査を定期的に行うことが大切だと言われています。

 

“頸動脈エコー検査”は心臓から脳に血液を送っている首の頸動脈に超音波を送って、はねかえってくる波を画像化し血管の内側の様子や血管内膜、血管壁を診て動脈硬化を起こしている部分がないかどうかを調べる検査で、頸動脈は動脈硬化が最も起こりやすい部分であることからこれによって全身の動脈硬化の進行具合を推測することができると言われています。

 

“頭部CT検査”は、脳の周囲360度からX線を照射して頭部の状況を5mm~1cmの間隔で撮影し、輪切りにした状態の画像を作成することができる検査で、これによって脳梗塞や脳出血、脳腫瘍なども早期に発見することが可能となっています。

 

検査は、検査台に仰向けに寝た状態でガントリーというドームのような機械の中に入ってじっとしているだけで、患者にかかる負担は少ないものです。

 

“頭部MRI検査”は磁気を用いて脳の断面を映し出す検査で、心臓ペースメーカーなどの金属が体内にある患者の場合は使うことができませんが、脳の検査に関してはCTよりも多くの情報を得ることができると言われています。

 

また、MRA検査はMRI検査の技術を利用して血管だけを立体的に映し出すことができるように開発されたもので、くも膜下出血や脳動脈瘤の発見に役立っています。